舞台『母に欲す』

舞台公演が終わりましたので、ネタばれ含む独り言です。

相変わらず文章力ない読み取る能力もない、ミーハーだけが一人前の拙い感想ですが、忘れっぽい自分の為に書き残しておく。

雑誌のインタビューやパンフ等はまだ未読ですので(これ書き終わったら全部読む!)間違った解釈も多々あるかもしれませんが、そこんところは軽くスルーでお願いします。




舞台 パルコ・プロデュース『母に欲す』

PARCO劇場
2014/07/10〜2014/07/29

森ノ宮ピロティホール
2014/08/02〜2014/08/03

作・演出/三浦大輔

音楽/大友良英

出演/峯田和伸銀杏BOYZ池松壮亮/土村芳 米村亮太朗 古澤裕介/片岡礼子 田口トモロヲ


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まずは『母に欲す』全25回公演無事終了おめでとうございます!

ぶっちゃけ今回(も)12回通ったキモヲタですが、どの回もそれぞれ空気感や印象が違ってて、つくづく舞台は生モノだなぁ…と実感。


ここを読んでくださる方は舞台観劇した方が殆どだと思うのですが、以下ざっくりしたあらすじなど。


《STORY》
田舎から上京して暮らしているけど、仕事も上手くいかず、常にお金に困っていて、性欲だけは旺盛なだらしのない生活を送っている菅原裕一(兄)。
仕事や支払いの催促から目を背けている間に実家に居る弟の隆司から連絡が入る。
留守電が何度も入ってるにもかかわらず、色々と説教されるのが目に見えてるので全く取り合わない兄。
そんな留守電ラッシュの合間に地元の友人から緊急を要すメッセージが入り、遅ればせながら友人に連絡を取った兄はそこで、つい先日も金を振り込んでくれた母の訃報を知る。

慌てて地元に帰るも既に葬式も出棺も済んでしまって、いつもそこにあった筈の母の姿は動かない遺影と骨壺だけになっていた。

好きなことをする為に上京しておきながら、いい歳をして母親に金を無心し、そのくせ母の一大事には音信不通だった兄を、弟は当然責める。
そして兄は、自分のしでかした事の重大さと、永遠に母を失った哀しみをようやく実感し、これから自分は母の為に何が出来るのだろう…と母の死に向き合う。

…ここまでが1幕。


2幕では、母を失って男所帯になった筈の菅原家の台所で女性が夕飯の支度をするシーンから始まる。

母の四十九日が過ぎてすぐに父が連れて来た女性に兄弟は戸惑い、特に母の居場所が無くなると怖れた弟は猛烈に反発する。
兄はそんな弟に引きずられるものの、その女性の存在にかえって亡き母の姿を思い出さずにはいられない。

兄弟に無茶苦茶言われても、父にきつく叱責されても、けなげに自分たち家族に尽くす女性を見ているうちに、いつしか兄弟も新しい母親の存在を受け入れ始めるが、父の部下が会社に父のゴシップをリークしてしまった事で、体裁を気にした父が再婚を断念し、新しい形で構築されつつあった菅原家の生活は、また2ヶ月前の母が亡くなった状況に戻ってしまう。

喪失感を抱えながら、それぞれの生活を歩み始める菅原家の人々。

そして、東京に戻った兄は、母が亡くなる前日に留守電に遺した最期の言葉を耳にする。

…これが2幕。




以下、感想。

見る人によって、こんなにも捉え方が変わる話ってそうそう無いんじゃないでしょうか。
性別、自分の立場(親とか子供とか)、身内を亡くしたことのあるなしによっても。
それぞれの立場から、自分にも身に覚えのある出来事や台詞にグサグサ心を刺されて、気付けばどっぷり感情移入してしまってる。

そんな中でも、この舞台の中心である峯田さん演じるお兄ちゃんが本当にスゴかった。
最初見た時は、ほんっとダメんずでどーしようもないなって思ってたんだけど、だんだん庇護欲を掻き立てられてく役でね、何もできないのに何故か周りから愛されてるのが納得できる不思議ちゃんでした。
あまり多くを語らないタイプなんだけど、その分めいっぱい感情のアンテナが張ってるひとで、だからイヤな事には目を潰って逃避しちゃう、みたいな子供みたいなひとで。

全身全霊でこの舞台に体当たりしてるのが客席にもビシバシ伝わってて、公演当初はむっちりしてた腰周りのお尻の肉が目に見えて落ち、テーピングしてた足の甲は靴下でカバー、公演を重ねるごとに痣やテーピング、サポーターが増えていく…とまさに満身創痍で見てるこっちがハラハラ。
大阪の公演ではカテコでふらついたり、支えなしでは立ってられないくらいの消耗っぷりだったのに、演技中は全力で頭ぶつける椅子から転げ落ちるセットから落ちそうなくらい飛込んでくる(そして池松くんに引っ張り戻される/笑)。
涙も涎も大放出で、出し惜しみなく全裸を曝す、こんな全力男子、好きにならん訳がない(笑)。

話が進むにつれて、周りとの蟠りが無くなってくると、電話も出るようになって言動の速度も常人並みになってきて、何故か子供の成長を見守る親のような心境になってしまう兄ちゃん…首まわりがヨレッヨレのTシャツ姿さえ可愛らしくて仕方ないよ!

そして兄ちゃんの見せ場でもあり、毎回楽しみにしてたのが1幕ラストの母への歌なのですが、やはり本業のミュージシャンさんだから、その時のノリや感情なんかで弾き方や歌い方が違うみたいで、どの回も震えがくるくらい心を揺さぶられるんだけど、特に大千秋楽での歌は、これでもかー!てくらい魂の叫びみたいな歌い方だったのに対して、ギターの音がものすごく優しく丁寧に弾いてらしてて、そのギャップがね、なんかすごく印象に残りました。


もうひとりの主役である弟演じる池松くん。
彼にも散々、撃ち抜かれました。

もう最初の喪服姿が格好良すぎてホゲー!ってなった(笑)。
田舎で両親と同居しながら地道に働く普通の青年で、彼女にも優しいんだけど感情が高まると辛辣なことも口にするこの役が単なる怒りっぽいコにならなかったのは、池松くんの雰囲気と、荒っぽい口調に見えても温かみを感じさせるあの訛りの為せる技でしょう。

あの弟がキレるのだって、亡き母や兄ちゃんやニューかあちゃんにかかわること…と考えれば、ただのマザコンでブラコンな優しい男の子だ。

肝心なときに駆け付けてくれなかった兄を、それでも赦して認めて頼りにしてたのは、地元で堅実に生きることしか出来ない自分に比べて、自らを表現する才能を持ち、好きなことをするために上京した兄に憧れて尊敬していたからだと思う。

でも一方で、亡くなった母の自分と兄への接し方の違いにジェラってたりもしたのかな。
『お金貸して〜』って母に頼られる自分をちょっと誇らしく思ってたのに、それが兄の為だった…とか思うとやっぱり複雑だよね。
一方、兄だって自分は親に何も出来ないだらしない兄貴なのに、弟はしっかり親の面倒を見ていて。

憧れあり嫉妬あり、だけどやっぱり血をわけた、ふたりだけの兄弟。

だから余計に兄弟が歩み寄ってからのやり取りが可愛くて仕方ない。
お父さんの愚痴を言いあって、ニューかぁちゃんのごはんにケチ付けようって提案してる辺りなんか、ほんと可愛くて微笑ましいよなぁ。
ごはん作る立場だったら『黙って食えや!嫌なら食うな!』って思うけどね(笑)!

そいや、初見の後で池松くん関連のサイト管理人4人でお茶してて、『初めて見たのになんかデジャヴュ…』って話になって、なんでだー?と思ったら、上手の上段で彼女とイチャコラしてるのとアメトークがぬる毒を彷彿とさせたんだった(どうでもイイ話)。

彼女にライターを投げ付けるとこはちょっとビビったけど、彼女とのラブラブちゅっちゅしてる場面はほんと可愛い。
彼女にハーパンを剥かれるシーンは、初日に行った友達が言うにはちょっと下ろされるくらいだったというから、回を重ねる事に膝下まで下ろされるようになってったのは、惜しみなく全裸を曝した峯田さんへの負けん気なんじゃないかという気がしてならない。
客席で見てるコチラは大喜びして拝見してましたけど。

弟くん、ほんと可愛くて格好よくて面白くて、名シーンがいっぱいあるんだけど、語ろうとするといくら時間があっても足りないので他の方たちの話が出来ないからこの辺で止めておこう。

田口さん演じるお父さんは、典型的な日本の父だった。
世間体を気にしてて、家では立派な父として振る舞ってて、妻には威圧的な態度を見せるけど子供に相手にされないところがなんだか切ない。
登場シーンなんてめっちゃ素敵でときめいたんだけど、ニューかあちゃん智子さんに対して赤ちゃん言葉で甘える姿のギャップがまた愛らしすぎて、2階に居る次男のコーラ一気からナイスげっぷを見たいのに可愛いお父さんも見たくて、どっちを見たら良いのー!ってジタバタしながら見てた。
あの舞台では見れてなかったけど、亡くなったお母さん相手にもあんな風に甘えてたりしたんだろうな…だったらいいな。

部下の田村くんに裏切られて『家でも会社でも…』って本音を爆発させるシーンは本当に切なかった。
大人になると立場も世間体も無視することは出来ないから自分の思うようには生きずらいよね、特に男性は…。

ニューかあちゃん智子さんは、ひたすら耐える女性で、菅原家の男性陣の為に尽くして尽くして、ようやく上手くいきかけたのにやっと掴みかけた幸せを手放さなければならなかったのが悲しい。
智子さんを含め、菅原家の父も兄弟も亡くなったお母さんの事は忘れられないけど、それでも智子さんと良い関係を築いていって欲しかった。

兄ちゃんに認められて、嬉しそうだった時や、お父さんにきつく当たられて嗚咽してた時の背中の演技がすごくて、顔が見えてないのに感情が伝わるのがものすごくて、見返りを求めずに家族に接する姿は応援せずにはいられなかったです。


そして、遺影と声だけなのに最大の存在感を放っていた、兄弟の本当のお母さん。
兄弟や友達との思い出話でも、兄ちゃんの歌の中にも、留守電の温かくて優しい声にも想像できるお母さんがとてもリアルで、客席の私達まで生きてる時のお母さんを知っているような気になった。
自分の死期を悟って、母という存在を自分ひとりだけのものにすることを願わず、自分の代わりになってくれるひとが現れたら遠慮なく甘えなさいって諭すお母さん…常に家族を1番に考えているんだから、つくづく母って偉大だよなぁ。


最期の『かあさーん!』からのあの展開は、性別の違いのせいか私には理解できなかったけど、見返りもなにも期待せずに惜しみなく愛情を注いでくれる母親という存在が、男のひとにとっては永遠の理想の異性なのかなぁ…って結論に落ち着いた(あくまでも私論)。


東京ではカーテンコールのみでしたが、大千秋楽ではその後にダブルアンコールがありました!

カーテンコールが終わっても拍手が鳴りやまず、主題歌が終わりに近付いた頃に1度めのアンコール。ギャー!期待してたけど本当にしてくれるとは!!
もうこれが見納めと手がちぎれんばかりに拍手!!

そして、曲が終わっても客席みんな残ってしぶとく拍手を続けていたら…なんともう1度主題歌が流れ始め…。


もう1度、幕が上がりました!!
しかも舞台中央に三浦さんっっ!!!
愛の渦の舞台挨拶以来の三浦さん!!!
あああああ、大阪まで来てよかった!!!!

喝采の拍手のなか、三浦さんがコメントしてくださったのですが、疲労困憊の峯田さんは立っていられずベッドに腰掛けて三浦さんのコメントを聞いておられました。

三浦さんは舞台を観にきたことへの御礼を丁寧に述べて、『自分があんまり喋っちゃうと芝居の余韻が無くなっちゃうから…』なんて奥ゆかしいこと言って(そんなことないのに!もっと聞きたいよ!)峯田さんにマイクを渡されまして。
峯田さんは『信頼関係も身体もボロボロになりながらも支えられてなんとか終われたことが嬉しい』とコメント。
続く池松くんは最初、三浦さんにマイクを差し出されて、いやいや…って遠慮してたけど、いざマイク持ったら『喋っていいんですか?』とか言いながら『この作品が大好きでした。兄ちゃんが大好きです。共演者、スタッフ、三浦さんが大好きです』とコメント。
そして田口さんが『初めての舞台で座長を努めた峯田くんが満身創痍で頑張った。その絶滅危惧種(峯田)さんを目撃できた感動を共有できた』と笑いを交えながら、なのに感極まったコメント、そしてその横で片岡さんが号泣。
三浦さんが片岡さんにマイク渡そうとしても頑なに辞退して(どこまでもニューかあちゃんのように奥ゆかしい女性だ…)、最後に三浦さんが『お母さん、おかげで僕はこんなにおおきくなりました』と締めて幕が降りました(コメントはうろ覚えです)。


1ヶ月間、時間と感情を共有して、菅原家の生活を垣間見せて貰ったあの空間は、全部が大切な宝物です。

この舞台を見て、なんか家族とかいろいろいっぱい考えさせて貰いました。

この舞台を届けてくださった7人の役者さん、スタッフさんたち、そして三浦さん、大変お疲れ様でした。


10月にはWOWOWでの放送も控えてるとのことなので、またあの感動が蘇ると思うと嬉しくて楽しみです。



WOWOW加入してないけど(最後にソレか…!)。